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07/18/2018

グスコーブドリの伝記

宮沢賢治が童話「グスコーブドリの伝記」を著した1932年当時、東北は「やませ」と呼ばれる冷害に襲われ、稲の不作が続く苦難の時代だった。物語の中で主人公のブドリは、イーハトーブの深刻な冷害を食い止めるため、カルボナード火山を意図的に爆発させることで、炭酸ガスを大気中に放出させ、その被害を最小限に抑える試みをした。現代人の視点からすると、温室効果ガスの働きをいわば逆手に取った考えで、賢治の先見性が伺える。

今日、稲の品種の改良によって、冷害に強い稲作が行われている。人々のたゆまぬ努力により、日本人は自然の脅威と直に向き合い、克服した。それどころか、東北は日本有数のお米の産地として日本はおろか、海外にも知られるようになった。研究者の不断の努力には頭が下がる。

日本は自然災害が多い。しかもその数と規模たるや尋常ではない。地震に関しては、鴨長明の方丈記の京都を襲った「文治地震」の記述が有名だし、元寇の時に台風が吹いた(戦の趨勢に台風が関与したかどうかは、歴史学者に異論があるのも事実)ということを我々は知識として持っている。

記憶に新しい自然災害だけでも、東日本大震災(2011)、広島市の土砂災害(2014)、御嶽山噴火(2014)、熊本地震(2016)、九州北部豪雨(2017)、大阪北部地震(2018)、そして西日本を中心にしたこの度の集中豪雨災害(2018)など、日本列島は複雑に入り組んだユーラシアプレート、太平洋プレート、フィリピン海プレート等の上に漂う脆弱な木造船のようでもあり、開闢以来、自然災害が収まった形跡が全くない。

そんな有史以来連綿と続く惨劇の連鎖に、臆することなく向き合ってきた我々祖先の気丈な精神に敬服するしかない。禍事を嘆いても終ることはないし、未来永劫続く自然災害に挑む気概こそが、勤勉な日本人の国民性を育んできたと私は考える。決して偶然の産物ではない。

日本列島のどこにも安全が完全に保障された場所はない。将来起こることが確実視される南海トラフや相模トラフ起因の大地震についても、日本国民の英知を結集して、被害を最小限に食い止めなければならない。特に首都圏を直下型の大地震が襲えば、日本全体が長期に麻痺してしまうはずだ。日本列島に住み続ける限り、我々はこの運命を甘受し、乗り越えなければならない。

宮沢賢治が「グスコーブドリ」を世に送り出した時代、彼が作品のなかで想定した温室効果ガスの役割は、なんと冷害の撲滅にあったとは。今の地球温暖化の危機は、温室効果ガスが一因になっているなんて皮肉だし、果たして賢治はこれを想定通りと考えただろうか、あるいは想像すらしなかったと嘆いただろうか。


P.S.宮沢賢治の作品は青空文庫で読むことができます。

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